「『学ぶ力』の土台」
校長 平田 理
真の「学ぶ力」を育てるには一定の時間が必要ですし、学校での学習や活動だけでは強固なものにはなり得ません。本人の努力や才能ばかりか、家族、親族、知人を含めた周辺にいる大人たちが協力的に育てる必要があります。興味を広げ、深め、学び続けるには周囲の環境も大切な要因です。
先ず、体験的学びの刺激が大切です。現代は技術革新のおかげで、10年前では想像できない速度と効率で情報収集が可能ですし、生成AIの学習速度が飛躍的に向上して、子どもでも瞬く間に完成度の高い作品や文章を仕上げることが可能です。しかし、速度と効率を優先させ試行錯誤が省かれると、問題解決への気づきや創造力、展開力なども削がれ、五感を利用する力まで衰える可能性があります。目、耳、口、鼻、舌、手を駆使する実体験は画面上からの情報の記憶と比べ長く続き、印象深く記憶されると言われますので、大切にしたいです。
次に読書です。これは学校や図書室だけでは身に着きにくい習慣です。読書をする人がそばにいると、本を好きになったり、読んだりする動機も生まれ易いと言われます。また、年齢に応じた読み聞かせや本に親しむことで、言葉の使い方、適用、漢字や言葉の意味といった知識や情報を得られますし、指でページをめくり、考えを巡らす時間は、記憶の定着にも好影響があるようです。デジタル化で便利な時代ですが、読書を通じての意見交換や思索的な時間を増やしたいですし、読書を勧める最も効果的な助言は「本を読みなさい」ではなく、先ず大人が本を読む姿を見せることかも知れません。
体験や読書によって得られたものを記録し、再生するために文字や音声を利用しますが、単なる走り書きからも、意見や心情に近い言葉選びを繰り返すことで作文力は磨かれます。作文は、考えを巡らせる時間や習慣が身に着きやすい活動ですから、「学ぶ力の土台」を育てる中で最も時間を必要とする、思考力を養うことにも繋がります。記憶の定着と反芻、再現力には個人差が大きいですが、考えをまとめ、他と比べ、更に練り上げることで、「学ぶ力の土台」が強化され、新しい事柄への適応力を生み出すのではないでしょうか。
『思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。』
マザー・テレサ(1910-1997)
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