「図頭力:図で考える力」
校長 平田 理
自動車会社の現場から出てきた「見える化」という言葉が、一般社会にも広く認知されています。「見える」に「化」を付けただけにも関わらず、様々な課題や問題点を、分かり易い図説や単純で明快な言葉で「わかりやすく」することを意味します。そればかりか、課題や結果と共に「過程」にも光が当たり、「周辺部署での仕事の方向性や作業の効率化に大きな影響を与えた」とのことです。
筑波大学の平井孝志先生(ビジネスサイエンス系教授)に依れば、簡易なものでも図を描くことによって「見えない」はずの思考や論理を「見える」ようにできるというのです。単純な図や絵を使って「考え」や「思い」を可視化することで、漠然とした過程を整理できますし、中心思想、重点課題、主軸となる作業を明確化できます。更に、漏れていること、矛盾や弱点、改善できることも浮上させるのだと言います。
「AI時代」においても、抽象化思考は大切ですし、「図を使って考える力:図頭力」を身に着けることで、AIにできない事柄や苦手な領域にも「創造力」を発揮できると言われています。図や絵を描くには、物事全体を見渡すと共に、細部にも目を配る観点が求められます。複雑なものを単純化する感性が必要ですし、単純なものを組み合わせ、アブダクション(abduction:仮説や推論を具体化すること)を繰り返して新たな観点を生み出すこともあります。
AIや工業技術がどんなに進歩したとしても、新しいことを創造する力、仮説と仮説を統合するような力は人間にのみ与えられた素晴らしい才能の一つですから、大いに生かしたいものです。
『おもてなし:ホスピタリティー』は、他者の気持ち、仕草や表情を観察し、察知し自分事のように接する「接遇の精神」を意味しますが、相手の立場や思いに近づいて、どうにかしてあげたい気持ちを行動に移すことで、まさに「図頭力:図で考える力」が必要です。
『人々に、次のことを思い起こさせなさい。・・・すべての善い業を行う用意がなければならないこと、また、だれをもそしらず、争いを好まず、寛容で、すべての人に心から優しく接しなければならないことを。』(テトスへの手紙 3章1,2節)
聖書も、人に与えられた創造力、分析力、統合力を駆使して善い業に備え、すべての他者に優しく接するように説きます。
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