校長 平田 理
2020年3月15日(日)に挙行された、第71回卒業式は、児童はもちろんのこと、保護者の皆様、私たち教職員も経験したことのない、忘れることのできない式典となりました。在校生は参加せず、限定された方々だけであり、マスク着用、間隔を空けて着席、式典時間も短縮しました。かつてない卒業式でしたが、神様の大きな祝福で充たされた時間となりました。神様と保護者の皆様からお預かりした卒業生たちは、制限された中にあっても、実に爽やかであり、笑顔で学び舎を巣立っていきました。この姿に、教職員一同、卒業式を無事に終えられた感謝でいっぱいでありました。
この度の校長通信は、卒業生に贈った言葉を掲載させていただきます。
卒業生の皆様、ご卒業おめでとうございます。皆様の新しい出発を心からお祝いし、新しい道のりが、これまでと同じように神様から祝福され、導かれますようにお祈り致します。
また、保護者、ご家族の皆様、お子様のご卒業を心よりお祝い申し上げます。これまでの長きにわたる本校へのご理解とご支援に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
さて、君たちは、いまだかつて体験したことのないことを、たくさん体験した卒業年を過ごしました。国内においては、「平成」が終わり、「令和」という新しい時代の節目を迎えました。また、昨年には、アジアでは初めて、ラグビーワールドカップが開催され、日本チームの歴史的な大活躍を身近に応援することができました。更に、この夏には世界的なスポーツの祭典、夏のオリンピック・パラリンピック東京大会が、60年ぶりに再び開催される年に、卒業されるのです。更に更に、今の社会状況も特別中の特別で、この卒業式は、いまだかつてない形の卒業式です。たとえ、君たちが卒業の年を忘れたとしても、世界中の人たちに記憶されている年ですから、きっと忘れようにも、忘れられない卒業の年、2020年となることでしょう。
卒業にあたり皆様は、献身を顕わす聖句として、『一つの部分が苦しめば、すべての部分が共に苦しみ、一つの部分が尊ばれれば、すべての部分が共に喜ぶのです。あなたがたはキリストの体であり、また一人一人はその部分です。』(コリントの信徒への手紙Ⅰ 12章26,27節)を選ばれました。これまで多くの友を喜びと共に受け容れ、時に悲しみつつ友を見送った君たち。ひとり一人の存在の大切さを知っている君たちだからこそ、選んだ聖句なのでしょう。
卒業祈祷週の総題は「15=1」14人の仲間に担任の先生を加えた15人がひとつであることを掲げました。卒業生一人ひとりの成長はご家庭や学校の力だけでは、為し得なかったことも表しているのではないでしょうか。ご両親、ご家族、先生方と共に14名に愛情を注ぎ、心を寄せられた神様のお守りとお導きを加えた「15=1」でもあります。ですから、ラグビーチームと同じ、15人のかけがえのない仲間を与え、ひとつとなる時間を備えられたのは、神様だと私は確信しています。
『ワン・チーム One Team』昨年の流行語にもなった、ラグビーでは有名な言葉です。チームとは、多くの人がひとまとまりの集団になる姿を表す言葉です。似た言葉に「グループ」があります。共通の性質で分類した、人や物の一団。仲間、集団。同系列に属する組織。しかし、「チーム」は、ただ単に人が集合した状態を意味しません。一緒にいる仲間だからでもなく、一つの目標を掲げているからでもない。同じ思いを分かち合っている。一つの方向に向かっている、心を合わせているから「チーム」なのです。多くの働き手がいますし、役割があります。与えられている才能も能力も異なっています。しかし、一つの理想や思いを分かち合い、力を寄せ合わせているからこそ、互いに認め合い、補い合い、「ひとまとまり」になるのです。
旧約聖書 エゼキエル書第34章に、神様が羊飼いとして養っておられる羊の群れのたとえがあります。そこにはいろいろな羊がいます。太った羊もいれば、やせた羊もおり、強い羊も弱い羊もいます。その群れの中で何が起きるのか、が示されています。
強い羊が、神様が与えて下さった牧草地で自分たちだけ澄んだ水を飲んで、飲んだら足でかき回し、後から来る弱い羊には泥水を飲ませるようなことが起きるというのです。強い羊が弱い羊を押しのけ、角で突き飛ばし、外に追いやることも起きるというのです。しかし、仲間同士で上手くいかなくとも、誰かからはじき出されても、神様は、『わたしがわたしの群れを養い、憩わせる』と仰います。更に、『わたしは失われたものを尋ね求め、追われたものを連れ戻し、傷ついたものを包み、弱ったものを強くする。・・・わたしは公平をもって彼らを養う』と約束されるのです。
「足が、『わたしは手ではないから、体の一部ではない』と言ったところで、体の一部でなくなるでしょうか。耳が『わたしは目ではないから、体の一部ではない』と言ったところで、体の一部でなくなるでしょうか。」(コリントの信徒への手紙Ⅰ 12章15,16節)
聖書は「弱く見える部分、見劣りする部分が必要だ」と教えます。わたしたちは自分の弱さを喜んでいるでしょうか。そして誰かの弱さを受け容れているでしょうか。「自分が弱くて、情けなくて好きになれない」と思う時こそ、「あなたを愛している、尊く思っている」という、神様の愛を思い出しましょう。私たちは神様によって尊ばれ、弱さも強さも、頂いているのです。神様と歩む道は、強い人が謙遜を学び、弱い人が信頼を学ぶ道だからです。
皆様は神様の下に集まり、羊飼いなる神様に養われている羊の群れ、One Team ワン・チームです。これを忘れてはなりません。皆様は一人ではありません、14人の仲間がいる、ご家族がいる、先生たちもいる。そして何より、一つの体、神様につながっている大切な部分なのです。その神様が必ず共に歩まれ、養われる大切な一人なのです。
体のすべての部分が、体には必要であり、強い人も弱い人も、15人の個性が、15人のそれぞれの役割と責任が大切なのです。
神様はこれからも、卒業生の皆様の歩みを、必ず見守り、支えられます。
なぜなら、皆様は神様につながる15人のTeamだからです。
神様から愛されている「特別で大切な皆さん」。この出会いを神様に心から感謝致しつつ、卒業生を送り出す言葉、「15=1 You are One Team in God」を送り、式辞と致します。
2020年3月15日(日) 第71回「特別な」卒業式 卒業生への言葉
学校紹介「校長挨拶」はこちらをご覧ください。