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「まなびの可能性:Affordance」

校長 平田 理

 

 

 

新年度始業から、早1か月余りが経ちました。登校時の在校生(上級生たち)の顔にはそれぞれの成長ぶりが感じられ、嬉しい限りです。まだまだ初々しい1年生も表情にこれからの大きな可能性を信じ、楽しみになります。

 

「Affordance:アフォーダンス(英)」は、「知覚や行為を促すものとして環境が内包している、ある種の影響力」を意味する言葉です。

米国の生態心理学者 ギブソン博士(James.J.Gibson 1904-1974)が、英語の「afford: 与える、提供する」から生み出した造語(概念)と言われています。例えば、コップの取っ手は、人に「持つ」という動作(行為)を促している(影響している)といった具合です。しかし、手の指を絡めて持つのか、足の指で挟んで持つのか、或いは両手で包み込んで持つのか等は、使う「人」に委ねられている「可能性」です。コップの取っ手のデザインは使う人に「指を入れて持つ」ように誘いますが、「取っ手」の使い方は、あくまでも使う人に委ねられている「可能性」なのです。

 

学校や教室という環境が子どもたちに促している影響力は、教科に関わる学び(新しい知識や情報)以外にも様々あります。新しいことや人との出会いによって得られる刺激や、心のひだで感じとることは適切に言語化できませんが、子どもたちの大切な「学び」なのです。

 

現在、4~6年生が縦割り班を作り、「ファミリー」となって構内を掃除する「上級生掃除」を実施しています。6年生が4,5年生に掃除方法を教えます。また「みんながきれいに掃除した場所を使ってくれるように」「みんなできれいに掃除ができてうれしい」と6年生がお祈りをします。この姿を4,5年生は見て「学び」ます。

運動会の全体練習でのラジオ体操や行進の集散では、5,6年生が良いお手本を見せ、模範となります。ここから下級生は生きた「学び」をします。

上級生が音も無くチャペルに入場する、起立や着席を号令や指示を受けずに行う姿に下級生は「学び」ます。

一方で、ふさわしくない言動で注意をうける姿を遠目に見ることから、自省や修正を「学び」ます。

 

周囲にいる大人の会話や人に接する態度を観察することによって、子どもたちは日に日に学び、感じ、吸収し、「影響されて」いく可能性があります。もちろん、本好きのご家族に囲まれて育ったとしても、子どもが本好きになるとは限りません。しかし、そこにある空気感や流れる時間、ご家族の知的な欲求が、柔らかで、好奇心に満ちた魂に与える影響と可能性は小さくありません。

 

聖書は、「子をその行くべき道に従って教えよ、そうすれば年老いても、それを離れることがない。」(箴言22章6節)と、子どもに寄り添う教えを説き、「すべての訓練は、当座は、喜ばしいものとは思われず、むしろ悲しいものと思われる。しかし後になれば、それによって鍛えられる者に、平安な義の実を結ばせるようになる。」(ヘブル人への手紙 12章11節)と、心穏やかに正しい道を歩むための、反復練習の可能性を示しています。

 

 

 

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