「ゼイネップのタイムマシン」
校長 平田 理
好天のもと運動会を終えました。4年ぶりにコロナ禍以前のフルプログラムで実施しました。本校は親子競技だけでなく、保護者だけのリレー・障害物競走・綱引きもあります。お家の人が懸命に走るなどの姿に子どもたちは大喜びでした。
上級生はマーチングを行います。このために前年度から練習を始め、運動会の2週間前からは練習を連日行いました。ドラムメジャー(指揮者)の指揮に合わせて、隊形をつくり、リコーダー、太鼓、ベルリラ(縦型鉄琴)、ピアニカ(鍵盤ハーモニカ)、トランペット、シンバルを練習し、合奏しました。音程も拍子も安定しなかった「音」が練習を重ねるたびに少しずつではありますが、まとまって「曲」となり「合奏」に仕上がりました。音楽好きや楽器演奏が得意な児童ばかりではありませんので、合奏には苦労が多かっただろうと思います。
「ゼイネップのタイムマシン」という教育的実験があります。トルコ政府が小学校3年生を対象に「非認知的能力を高める」ために研究しているプログラム(週2時間、8週間)です。具体的には「タイムマシン」を自作させて、「将来のある一日」の自分を想像させるのです。子どもが「最新型のドローン」が欲しいと仮定すると、その「タイムマシン」に乗り込んで「未来」に行くと「ドローン」を使って楽しんでいる、いない。更には「ドローン」でどんな遊びができるかを相談したり、「ドローン」を手に入れた嬉しさを共有させたりする。一方で、お小遣いが不足して手に入らなかった場合や、どのようにお小遣いを使うべきかを相談させ、「将来を具体的に想像させる」といったものです。プログラムを通じて意思決定がもたらす効果や結果を学ぶのです。将来を想像できるグループは消費行動を管理するようになり、このプログラムを経験しないグループは眼前の欲求を満たす消費を繰り返す傾向があるといいます。簡単に評価し難い「自制心」や「忍耐力」を考える機会を与えることで個人の意思決定、消費行動の質を向上させるばかりか、トルコの若年層全体に対しても好影響を与えようとしています。
「社会情緒的な力(非認知的能力)」は、突然身につくものでは無く、小さな判断や決断の積み重ねで身に着けていく美徳です。鼓笛隊の楽器演奏が上達することにも似て、実際的な「練習」「訓練」が必要不可欠です。上質な理論や教材を与えたとしても曲は演奏できません。個別や全体の「練習」「訓練」が演奏の鍵です。
「社会情緒的な力」を涵養(かんよう)することも同様です。日常生活の一つ一つの小さな瞬間に「練習」が在り、そこで下される小さな積み重ねが「生きる力」を育むのです。
「わたしたちは、見えるものにではなく、見えないものに目を注ぐ。見えるものは一時的であり、見えないものは永遠につづくのである。」(コリント人への第二の手紙4章18節)
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