「積極的な訓練:Positive Discipline」
校長 平田 理
「積極的な訓練」(Positive Discipline ポジティヴ・ディシプリン」は、カナダの臨床心理学者ジョーン・E・デュラント博士(Joan E Durrant, Ph.D)が、国際的子ども支援NGO「Save the Children」と共に、「こどもへの向き合い方」の基本的な考え方を提案したプログラムです。子どもたちに関わる全ての養育者向けに開発した(2007年)内容で、4本の基本的なアプローチが柱です。
①長期的な目標を決めること
②温かさと枠組みを示すこと
③こどもの考え方、感じ方を理解すること
④課題を解決すること
このプログラムの基本に流れている考えは、養育者が懲罰的な子育てから距離を置くことにあります。しかし、多くの場合、子育ては短期的な目標に縛られて、養育者にも、子どもにもストレスを与えています。
ご自宅の登校直前の子どもたちにして欲しいことは何でしょうか?時間になったら起きて、ごはん、着替え、歯磨きを手早く終え、持ち物、制服を整え、宿題などの提出物をしっかりと鞄に入れ、笑顔で挨拶をして玄関を出ていく子どもです。しかし、実際は、子どもに「早く○○しなさい」と立て続けに指示を出し、繰り返し確認し、時に大きな声を出して叱責し(表情も)、促しと励ましのつもりで余計な手助けをし、ようやく送り出す。ホッとして見回すと玄関には、あれだけ確認した「忘れ物」の弁当や傘が・・・。ほぼ毎日繰り返される短期目標への適応の確認と監視的な視線や指示を注ぎ続け、懲罰的になることが日常かも知れません。提案にある、温かさや慈しみの視線からは程遠い現実があります。
そこで大切にしたいことが、長期的な視点で子どもと一緒に考え、合理的に判断する機会を増やし、少しずつ自制心や課題に取組む前向きな態度を身に着けていく活動、これが「積極的な訓練」のアプローチです。
例えば、「どんなお友達にも優しくする子ども」を長期目標にするのであれば、家庭においても、子どもたちの日毎の状況に大きく左右されるのではなく、大人も優しい声かけや共に考える時間を持って、子ども自らが始めたり、考えたりすることができるように促す助言や寛容な姿勢と忍耐が問われます。意地悪な言動、露骨な表情、時には自分を守る為に嘘(大袈裟な表現)もついてしまう子どもの特性を理解し、大人も似たような弱さがあることを自覚し、謙虚さを忘れず関わるように促されているのです。
聖書も同様に「両親にもひとこと言っておきます。子どもを、いつもうるさくしかりつけて反抗心を起こさせたり、恨みをいだかせたりしてはいけません。かえって、主がお認めになる教育と、愛のこもった助言や忠告によって育てなさい。」(エペソ人への手紙 6章4節 リビングバイブル)と大人の愛ある姿勢を問いただしています。
学校紹介「校長挨拶」はこちらをご覧ください。