「共励 たがいにはげます」
校長 平田 理
5月に入り、恒例の運動会に向けて様々な練習が始まり、夫々の学年毎に、全体でも熱心に取り組んでいます。特に学年種目では互いに励まし合い、声をかけ合って練習しています。厳しく、否定的な言葉が飛び交うこともありますが、「大丈夫!大丈夫!」「それでいいよ」「うまいうまい」「もっとできるよ」と励ます言葉が多く聞かれ、和やかな空気が流れています。子どもたちに手を振りながら、遠目に眺めて楽しんでいます。
「縁上回:えんじょうかい」耳慣れないこの言葉は脳内の領域を示す名称で、頭頂葉と側頭葉のつながるところにあります。頭頂葉の働きは膨大ですが、「ものを知り、ものに働きかける、他者を知り、やりとりする、自己を知り、未来の行動や計画に生かす」働きを司っているそうです。更に興味深いことに、この領域には、誰かに共感を示さずに自己中心的になるとその是正を促す機能までも、「生来的に備えられている」というのです。
「他者を知り、向き合う力、他者の立場を理解しようする力」、いわゆる「共感力」は、家族とのやりとりや集団生活での経験によって学ぶ、社会心理的な力ですが、脳神経に備えられている機能を刺激し、呼び覚ます力とも言えそうです。
また脳内では、誰かが痛みを感じている様子を観ていると、自分のことのように痛みを感じる、「情動伝染」と呼ばれる現象が起こることが知られています。最近では東京大学定量生命科学研究所の奥山輝大准教授らの研究グループ(英国科学誌Nature Communications 2023)によって、「自分と他者の感情の情報を同時に持って表現する神経メカニズム」の存在が確認されています。言い換えれば、「自分と他者の感情の境界が無くなる状態」にする細胞が「誰かをわかろうとする力」を生み出していそうです。
私たちの大脳に備えられた「共感力」は、脳の働きを実際の行為に至らせるために、欠かせない働きも担っているようです。分子発生生物学者 ジョン・メディナ博士(米国ワシントン大学医学部生体工学科)によれば、「脳は生存を第一目的として働いているので、他者との関係を必要としています。」「生きるため」に脳が備えている機能が発育・発達するには、誰かとの関わりが必要なのです。
「ですから、あなたがたは、現にそうしているように、励まし合い、お互いの向上に心がけなさい。」(テサロニケの信徒への手紙一 5章11節)と、聖書は勧めるのです。
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