「あなたの提案」
校長 平田 理
昨今、どの段階の入学試験でも、過程や答えを覚えて容易に解答にたどり着くような問題ではなく、解答らしい解答の出ない問題や課題に向き合い、自らの価値観と判断力で解決の糸口を見つけ、解決策を導き出すような問題が増えています。例えば、近年耳にすることが増えた「オーバーツーリズムの問題」でも「あなたが提案する観光地の局所的な混雑の解決策は?」と、大人でも中々妙案が浮かばない問題への「あなたの提案」が求められます。
ある会社で二人の社員が働いていました。それぞれ担当の役割と責任を果たしていましたが、ある時、A社員はB社員と給与に大きな差があると知ります。それもB社員は自分のおよそ3倍のようでした。
釈然としない気持ちの中、海外の大きなプラント建設現場への資材運搬業務がA社員に任されました。A社員は挽回の機会を得た気持ちで、上司からの指示を丁寧にこなし、責任を果たしました。しかし、依頼した海運会社の船舶故障で輸送が大きく遅れ、場合によってはキャンセルになる事態です。
「どうしましょうか?」
『別会社はつかえないのか?』
「急な対応で無理では?」
『別のルートか、割高でも別会社はないのか?』
「予算を越えてしまうのでは?」
上司は『わかった。』
上司はB社員にも同様の依頼をしました。
B社員は、「少し調べましたが、同質の資材を運搬している別会社がありましたので、少し割高でも良いので緊急対応してもらえないか交渉したところ、配送に余裕があるので担当できるとのことでした。資材運搬に遅れが生じると建設工程も遅れ、諸々負担が大きいので、既に発注済みです。」(原作:ポーランド寓話「2ズウォッテイのモイッシュ」)
A社員は上司の指示に丁寧に答えましたが、業務の目的を理解した判断をせず、事後の段取りや他の影響を想像できず、提案もしませんでした。更に柔軟な対応や粘り強い交渉にも動けなかったのです。
給与の差は責任(仕事)への向き合い方でした。与えられた課題や責任への能動的な答え:「あなた自身の選びや考え」が問われる時代です。
聖書には主人から預かった財産(タラントン)を、期待に応えて増やした人には更に多くのものが与えられ、失敗を恐れて土に埋もれさせた人が財産を取り上げられる例え話があります。(マタイ25:14~29)
この例え話で奨励されることは、失敗を恐れる人生ではなく、粘り強く失敗や心配を乗り越える「選び」なのです。神様から託された財産を人と社会に喜ばれるように用い、与えられた恵みに感謝する「あなたの提案」が必要なのです。
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