「小さな平和への情熱」
校長 平田 理
今年のノーベル平和賞は「日本原水爆被害者団体協議会(被団協)」が受賞し、核廃絶への長年の取組みや姿勢が再注目され、評価されています。授賞理由の背景には、核兵器利用の危機を意識せざるを得ない差し迫った状況がウクライナとロシア、イスラエルとパレスチナ・ガザ地区、レバノン、イランへと広がりつつあるからと言われます。被団協の活動を長く支えてきた代表委員、田中熙巳(92)さん、箕牧智之(82)さんらは「ガザの子どもたちと原爆孤児が重なった」「この受賞はスタートだ」世界のこの状況は「全人類が被害者候補になっている」と危機感を募らせたコメントを出しています。
イラク出身のナディア・ムラド(2018年ノーベル平和賞受賞者)は、レバノン出身のアマル・クルーニー弁護士と共に、イラクでの小さな平和と人権を取り戻すために、地域に住む女性への職業訓練や社会的地位向上のために活動を続けている人権活動家です。紛争地や戦禍での人権蹂躙、ジェノサイド(大量虐殺)の撲滅を目指して、自らの体験を語り、支援を続けています。故郷の女性の窮状を改善するために、二人の女性は、自分たちのできることを駆使して発言し、支援し、協力を広げ、小さな平和を取り戻す活動を進めているのです。(アマル・クルーニーは人権擁護活動に取り組む国際弁護士で、ハリウッド映画スター、ジョージ・クルーニーの妻、双子の母親)
クルーニー弁護士はムラド女史を「この時代にふさわしいリーダーで、美しい魂の持ち主」だと賞賛しましたが、ノーベル賞受賞のように社会的な評価を受け無くとも、多くの地域、社会、国々で小さな平和を取り戻すために日夜、情熱をもって奮闘し、活動している「美しい魂」を持つ人々の存在を忘れてはなりません。
「あなたがたの他人を苦しませる能力に対して、私たちは苦しみに耐える能力で対抗しよう。あなたがたの肉体による暴力に対して、私たちは魂の力で応戦しよう。どうぞ、やりたいようになりなさい。それでも私たちはあなたがたを愛するであろう。」不正な法律や体制、暴力や理不尽な差別に対して、「愛すること」で対抗すると述べた、マルティン・ルーサー・キング牧師の言葉を胸に刻みたいのです。平和や幸福が簡単に脅かされる時代に生きる私たちひとり一人も、小さな平和への情熱を新たにしたいものです。(『キング牧師の言葉』コレッタ・スコット・キング編より)
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