2026.03.09
校長通信
校長 平田 理
「111本の木」。この実話に基づく絵本を、埼玉県日高市にある書店「緑のゆびhidaka」店主からご紹介頂き、一人の親として強い感動を覚えました。
インドの一部の地域では、男の子の誕生は歓迎されますが、女の子の誕生は必ずしも喜ばれず、早すぎる結婚や十分な教育を受けられないという社会問題が存在していました。同時に、村の資源である大理石の過剰な採掘が進み、自然が壊され、水不足や緑地の消失といった深刻な環境問題も広がっていました。
村長になったスンダル・パリハール氏が、この二つの問題を同時に解決する画期的な方法を提案します。それは、女の子が生まれるたびに、村人全員で「111本の木」を植えるというルールでした。「111」という数字が選ばれた経緯は、インド文化において、111は「1」が3つ繰り返されることで、縁起の良さが最大級に強調され、生まれた女の子の未来が素晴らしいものになるよう、強い願いと特別な意味を込めたそうです。
この取組みにより、女の子の誕生が次第に村全体の喜びとなり、植えられた木々が自然を回復させ、水資源や緑を取り戻しました。さらに、村長は女の子が18歳になるまで結婚せず、教育を受けるというルールも設け、女性の地位向上とジェンダー平等も推進しました。結果として、村は豊かな自然を取り戻し、教育を受け、仕事を持つ自立した女性が増え、生き生きとした村へと変わりました。
村長がこのプロジェクトを始めたのは、彼自身が幼い娘や母を失った経験から、「娘(命)の尊厳」と「水と緑(自然環境)」を結びつけることが、村の再生に不可欠だと強く感じたからです。そして、一人のリーダーの強い意思と具体的な行動が、長年の古い慣習(環境破壊)や偏見(女性軽視)に変化をもたらし、村人の意識に刺激を与え、一致と協力によって大きな転換を生み出したのです。「111本の木」という具体的な提案と行動が、人々の意識と村の環境を根本的に変えました。目先の利益(大理石の採掘)ではなく、未来にある希望を想像しながら、子どもたちのために、環境や教育といった持続可能なものに投資することの価値が認められたのです。小さな村の大転換は、全ての子どもたちが性別によらず教育を受け、社会で活躍することこそが、地域や社会全体を豊かにし、活性化させる鍵であることを示し、環境問題とジェンダー平等という大きな課題を改善できたことを伝えています。
聖書では、正しい歩みをする人を「流れのほとりに植えられた木」に例えています。
「その人は流れのほとりに植えられた木。
ときが巡り来れば実を結び
葉もしおれることがない。
その人のすることはすべて、繁栄をもたらす。」 (詩編 1編3節)
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