2025.12.15
校長通信
校長 平田 理
「Joy to the World」(邦題:もろびとこぞりて)。この有名なクリスマ讃美歌には、イエス・キリストの誕生であるクリスマスだけでなく、イエス様が再びお越しになる(再臨)というテーマも含めた、「救い」と「希望」のメッセージが強く込められています。
歌詞の作者はイギリスのアイザック・ワッツ牧師 (Isaac Watts, 1674-1748) です。18世紀初頭、イギリスでは讃美歌は聖書の詩篇を古い言葉のまま歌うことが主流でした。しかし、ワッツ牧師は、「礼拝の歌はもっと感情豊かで、人々の心に響くものであるべきだ」と考えました。彼は、聖書の詩篇98篇と創世記3章の言葉を土台にしつつ、当時のキリスト教の教えや信仰を反映させた、新しいスタイルの讃美歌を作り始めました。これが「Joy to the World」の歌詞の土台です。
後にこの賛美歌を編曲したのは、アメリカの音楽家・教育者であるローウェル・メイソン (Lowell Mason, 1792-1872) です。メイソンは、ワッツ牧師と同様に、より親しみやすい讃美歌を人々に届けるため、当時アメリカでも有名になっていたゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルのオラトリオ(聖譚曲)作品から着想を得て編曲しました。例えば、「もろびとこぞりて」のメロディーは、ヘンデルのオラトリオ『メサイア』 (Messiah, 1741年)の合唱曲「And with His stripes we are healed(彼の打たれた傷によって、私たちは癒やされた)」の冒頭と、非常によく似ています。これは、メイソンが「クラシック音楽の荘厳さ」や「良質な音楽」を多くの人々にも賛美してほしいという教育的な願いから、意図的に取り入れたと言われています。ところが、ワッツ牧師の英語詞の第3節は、日本語の歌詞には一般的に含まれません。
「もはや罪も悲しみも無く、地には苦しみのとげも生えない。」
(No more let sins and sorrows grow, Nor thorns infest the ground;)
「不幸が満ちている限り、主は祝福を満たすために来られる。」
(He comes to make His blessings flow Far as the curse is found.)
この歌詞は、世界から苦しみを取り除くという壮大な救いの計画と、人々に永遠の希望をもたらす、という神学的に深い内容を含んでいます。
英語詞が誕生のお祝いだけではなく、救いと希望を現わす時とするのに対し、日本語での歌詞が「祝い」と「喜び」に焦点を当てているため、日本語では省略されたようです。
「もろびとこぞりて」。人々の信仰心を高め、「新しい歌(讃美)」を献げたいと願った、一人の牧師の情熱の結晶が、お祝いの歌詞「主は来ませり(the Lord is come)」と共に、時代を超えて親しまれている土台には、救いの喜びとイエス様と再びお会いする希望を伝える「新しい歌」が含まれているからだと感じます。
「全地よ、主に向かって喜びの叫びをあげよ。歓声をあげ、喜び歌い、ほめ歌え。琴に合わせてほめ歌え、琴に合わせ、楽の音に合わせて。」(詩編98編4,5節)
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