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2026.05.19

校長通信

「情解(じょうげ)と情懐(じょうかい)」

校長 平田 理

 

 「情解(じょうげ)」と「情懐(じょうかい)」。日常生活では聞きなれない、ほとんど利用しない言葉かもしれません。これらは「感情を解きほぐすこと」と「心に抱く思い、あるいは懐かしむ情」を表す言葉です。デジタル情報化が過度に進み、画面上の情報を表面的に読み過ごすことに慣れている私たちには距離を感じる言葉ですが、このような時代だからこそ、自らの内面を静かに俯瞰することが必要ですし、子どもたちの心の豊かさを育むための考えを整えておきたいものです。

 

 心を解きほぐしていくには、内面を深く掘り下げ、他者や世界とのつながりを感じ、味わう力を養うことが鍵となりそうです。そのためには先ず、言葉にする力を磨くことが大切です。感情は、モヤモヤとした状態では解消されません。それを言葉にすることで、少しずつ客観的に思いや情を確かめられるのではないでしょうか。多くの人が好む「日記を綴る」ことは「書く瞑想」とも呼ばれます。「なぜ今、心がざわついているのか」心に湧きあがったことをそのまま書き留めることで、絡まった感情やざわめきの糸が解けていきます。「うれしい」「悲しい」だけでなく、「切ない」「心細い」「こそばゆい」など、微細な感覚の違いを表す言葉を知ること、語彙を増やすことで、おぼろげな心模様を、より確かに捉えられるようになるはずです。

 

 効率やスピードを重視する現代では、「情懐」を育むための「心の余裕」が失われがちです。あえて無駄に思える時間、心の余白を楽しむような時間こそが肝要です。季節の風の匂い、夕暮れ時の空の色、雨音の響き・・・自然の息吹に心を向けることで、情緒が刺激され、豊かさを増していくでしょう。また、過去の経験や出会った人々を思い返し、当時の感情を今の視点で捉えたり、再解釈したりするような述懐も、深い味わいのある「情懐」へと繋がるはずです。さらに情緒を深化させるためには、自分だけで完結せず、他者の「物語」に触れることも重要です。優れた芸術や文学に触れることや、優れた小説や映画に出会うことは、自分では一生かかっても経験できない感情を擬似体験させてくれます。それは互いの「感じ方」を分かち合うような対話を生み、単なる情報のやり取りではなく、自分の心の輪郭をはっきりさせ、なぞらせてくれるような体験にもなるのだと思います。「自分の心に対する丁寧な扱い」を日々積み重ねることで「豊かな心」を養い育てたいものです。

 

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